ロック・ミュージック2


020

Blood & Chocolate

ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ

【シンプルな感動】華麗なギミックも過剰なエコーもなし。シンプルに直球勝負の音

 

ミュージシャンはどうやって芸名を付けるのでしょうか。 ニックネームがそのまま芸名になった場合もあれば、デビュー時に自分で考えて付けた人もいるらしい。 Elvis Costelloは、自分の芸名を「冗談だったが軽薄すぎる」と言って突然変えてしまいました。 その上、それまでずっと一緒にやってきたバックバンドのThe AttractionsやプロデューサーのNick Loweの事を悪く言うようになりました。 「ブースで呑んでただけ」とかNick Loweもひどい言われようでした。

 

そうこうするうちに、Costello Showと言う名前で発売されたアルバムKing of Americaは、悪くはないが何か心に響かないものでした。 それまでのアルバムと比べるとどうしても愛着が持てずに、ブックオフ行きです。

 

その後、唐突にElvis Costelloの名前でこのアルバムがリリースされました。 1曲目Uncomplicatedを聴いたらすぐに気に入りました。僕は、Nick Loweのエコーが無くてザラザラした音が大好きなのです。前作以前のお気に入りの感じが戻ってきて満足でした。

 

3曲目のTokyo Storm Warning(東京暴風雨警報?)はCostelloの魅力に溢れた曲です。アップテンポで畳み掛けるボーカルがたまらない!I Want YouはバラードでタイトルのI Want Youを繰り返す曲。ちょっと暗いメロディだが良い曲です。昔から大好きな曲がBlue Chairです。 どちらかというと目立たないシンプルな曲なのですが ちょっと愁いを帯びたメロディとCostelloのボーカルがすごくイイ。

 

結局良く分からない改名騒ぎでした。恐らく 外からは想像も出来ない強いストレスがショービジネスにはあるというのが原因で、それに逆らうアーティストの行動が、ときには奇行につながるのでしょう。


019

Pink Moon

Nick Drake ニック・ドレイク

【シンプルのパワー】Less is more、これ以上何も加えない

 

友人が書いた設計図を見て音で建物を建ててしまった『展覧会の絵』の『キエフの大門』や、ショトフという画家の作品を音楽化したBrian EnoのThe Shutov Assemblyを挙げるまでもなく、音楽と建築は似てる所があると思います。

 

音楽は音符を、建築は建材を1つ1つ積み重ねていく、過美な装飾が魅力のものがあればシンプルさを強調したものもあります。建築家ミース・ファン・デル・ローエは、シンプルが持つ魅力を“Less is more.” (より少ないことは、より豊かなこと)と表現しました。

 

このアルバムは殆どギター1本です。しかも、アコースティック・ギターなので派手なギターソロもなく、シンプルなリフの繰り返しです。音の細部にまでこだわってダビングを重ねるアーティストの作品と比べると、デモテープ以下かもしれません。

 

でも、単調とか退屈かといえばそうではありません。1曲目のアルバムタイトル曲に始まり、3曲目のRoadや4曲目のWhich willなど素晴らしい曲が続きます。聴くたびに、「これ以上何を追加すれば良いのだろう」と思ってしまいます。まさに音楽でLess is moreを表現した作品です。

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Roman Candle


018

Goodbye Yellow Brick Road

ELTON JOHN  エルトン・ジョン

【最高のメロディメーカーの最高傑作】考えられる全てのタイプの曲が入った、ポップスのカタログ

 

長いキャリアの中で、物凄い勢いで傑作アルバムをリリースし続けた時期を持つアーティストがいます。発表する毎にどんどん登り詰めていく感じです。ところが、ピークの作品(多くは2枚組)を発表後、つきものが落ちたようにおとなしくなってしまいます。

 

思い当たるのは、Stevie WonderやBob Dylan、そしてElton Johnです。ピークの作品は、それぞれSongs in the Key of LifeでありBlonde on Blonde、そしてこのGoodbye Yellow Brick Roadです。それぞれ、その後もアルバムをリリースし続け長いキャリアを誇ってはいても、そのアルバムはもはや別物と思えるほど印象が異なります。作品そのものはそんなに悪くないのに、何故か全く輝きを失ってしまった感が強いです。

 

勿論、これには異論も多いと思います。「私はHotter Than Julyが一番好きだ」とか、「いや、DesireでDylanは2度目のピークを迎えた」とか言う人もいるでしょう。これらの作品に別のおもむきがある事は認められても、それまでのアーティストの才能が迸り出るような感じが全く無くなっている、と思います。

 

Elton Johnは、デビュー以来Your SongやDanielなどヒット曲を含んだアルバムを連発した後、この2枚組アルバムをリリースしました。稀有のメロディーメーカーであるEltonのピークの作品だけあって、さすがに名曲揃いです。特に、マリリンモンローに捧げた2曲目のCandle In The WindからBennie And The Jets、タイトル曲へと続く怒涛の三連続は素晴らしい!更に言えば、ソウルフルなBennie And The Jetsは最高!!傑作ぞろいのこのアルバムの中でもこの曲だけリピートして聴く時があります。「キャンディとローチン、もう彼らを見たかい?ベニー・アンド・ジェッツを。いかれてるけど、変わっているけど、素晴らしいよ。」本当に居ると思ってレコードを探したのが、いまでは懐かしい。

 

2枚目は、1枚目と比べると多少地味な印象を受けます。それでも、アップテンポのロックンロールSaturday Night's Alright For Fighting等有名なヒット曲も入っており、負けず劣らず良い出来です。本当に粒ぞろいの良曲ばかりで息抜きの曲が無いため、2枚続けて聴くと疲れてしまうという程のアルバムです。

 

最後はHarmonyで終わります。このメロディがまた泣けるほどよい、物哀しい雰囲気が、今聴くとEltonのピークの終わりを静かに告げているかのようです。


017

Then Play On

FLEETWOOD MAC フリートウッド・マック

【ブルースロックの美しい結晶】60年代数多くのブルースバンドが現れては消えていった、その中でも抜きんでた存在

 

探すのが面倒なのでうろ覚えのまま書きます。幸田露伴の「努力論」に、成功した者は自分の努力の賜物と思い、失敗した者は自分は運がなかったと思うといったような事が書いてあったように思います。

 

Creamをはじめとした多くのブルースバンドの1つとして、Fleetwood Macは60年代にデビューしました。Black Magic Womanなどヒット曲に恵まれたものの、結局失速しバンドは空中分解してしまいました。後に、Rumoursが大ヒットとなりましたが、あれはメンバーもほとんど違い、全く違うバンドと言えます。

 

荒々しいブルースをベースに、看板ギタリストのPeter Greenがかなでる泣きのギター、加えて、アコースティックな美しい曲となれば、誰もが思い浮かべるのはLed Zeppelinです。雨後のタケノコのように現れた60年代のブルースバンドの中で、結局、長く成功を続けられたのはLed Zeppelinだけでした。

 

1969年という60年代が終わろうという時期に発表されたこのアルバムを聴く、とにかくどの曲も素晴らしいです。1曲目の曲調はちょっとラテンっぽさも感じられSantanaを思い出します。そういえば、SantanaはBlack Magic Womanをカバーして大ヒットさせました。6曲目のOh Wellは特に名曲です。前半は激しく、一転して後半はアコースティックで静かな感じになります。

 

アルバムからは才気溢れるバンドの勢いが感じられて、この先の暗い結果などは予感も感じられません。成功し続けるには運がなかったのか、それとも何かが足りなかったのか?

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E. C. Was Here


016

O

DAMIEN RICE ダミアン・ライス

【静かな雨のように】乾いた大地にゆっくり雨がしみ込むように、心の奥にしみ込んでいく。

 

アーティストが唄うのは、リスナーに何かを伝えたいと思っているはずです。ただ、伝えることは難しくて、伝える方が激しく一方的にメッセージを叫んでも、効果なく、全く伝わらないものです。

 

「O(オー)」というシンプル過ぎる名前が付けられたこのアルバムは、アコースティックギターのイントロが流れ、ゆっくりとした曲調で本当に静かな曲Delicateから始まります。大声を張り上げてメッセージを叫ぶわけでもなく、滔々と高らかに謳い上げるわけでもない。乾いた大地に静かな雨がゆっくり浸み込むように、静かに心にしみ込み、心の奥を激しく揺さぶり始めます。

 

2曲目のvolcanoは女性ボーカルも加わり、流れるようなメロディが綺麗な曲です。大地の下に熱い溶岩が流れていて、どこか穴があればいつ激しく噴き出すかわからない、Damien Riceの激しい思いを感じます。

 

激しい感情を伝えるのに、静かに伝えた方がより激しさが感じられる事もある、というのが良く分かるアルバムです。


015

Fish Rising

STEVE HILLAGE  スティーブ・ヒレッジ

【スペース・サイケ音楽】実は海や魚とは全然関係ないポップなサイケ、スペース・ギターもGOOD

 

タイトルがFish Risingでジャケットが魚の絵、The Salmon SongとかFishという名前の曲も入っています。クレジットがSTEVE HILLFISH、演奏楽器もGitfishです。当然、海をイメージさせる音を想像してしまいますが、実際に聞いてみると「熱にうなされたサイケ」という感じの音楽です。強いてあげるなら2曲目の「ごぼごぼごぼ」というSEでしょうか。では何故?と思いますが単にSteve Hillageが釣り好きというのが理由だそうです。初めて知った時は少し笑ってしまいました。

 

このアルバムの曲はどれも素敵で演奏もかなり気合いが入っています。Steve Hillageもギターを弾きまくっています。特に1曲目の17分に及ぶ力作Solar Musick Suiteと3曲目Meditation Of The Snakeがお勧めです。

 

ギターというのは本当に不思議な楽器と思います。どうしてこんなに弾く人によって感じが違うのでしょうか。同じサイケを演っていてもJerry Garciaのギターは官能的なのに、Steve Hillageはふわふわしています。スペーシーな感じです。それがサイケに良くあっています。

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E2-E4


014

Songbook

PAUL SIMON ポール・サイモン

【凍える冬空の星】 地味な弾き語りに、失意のどん底の中でのひそかな覚悟が

 

「男は顔じゃないよ、心だよ」とか「美人も3日で飽きる」という言葉があります。「顔がコンプレックスだったけど、整形したら性格まで明るくなりました」と患者が語りかける美容整形外科のコマーシャルがあります。私達は、通常、内面(本質)と外見を分けて考えていますが、曲に対しても同様のメタファーで聴いているのではないでしょうか?

 

BeatlesにRevolutionという曲があります。Johnがシングルカットしようとしたら、PaulとGeorgeが地味すぎると言いだし、結果、アップテンポでハードなギターが入る派手なバージョンがシングル用に作られ、オリジナルはRevolution 1としてWhite Albumに収められました。あれだけレコードが売れたというのに今更という気がしても、やはり「Beatlesのシングルが売れない」というのは彼らのプライドが許さないのでしょう。

 

Simon & Garfunkelはヒット曲を連発した60年代のスーパーデュオという印象が強いですが、デビュー当時は全く売れなかったらしいです。失意のPaul Simonがイギリスに渡って作ったのがこの初ソロアルバムです。アコースティックギターの弾き語りでI am a rockやSound of SilenceなどSimon & Garfunkelでおなじみの曲もやっています。Sound of Silenceには例のイントロも入っています。聴き比べると、S & Gバージョンの方が、テンポが速めなのとエレクトリックな楽器やドラムが入り、華やかな印象です。これが功を奏したのか、その後スター街道を歩む事になります。

 

John LennonやPaul Simon本人がどう思ったのか知る由も無いにしても、「多少アレンジ(外見)が変わっても曲の本質には変わりがない」とか「売れる為には外見の方が重要だ」といった議論があると思います。だが、曲の本質など本当は無いと僕は思います。メロディや歌詞の一部から曲の本質があると思い込んでいるだけです。アレンジは、曲の本質が纏う服装では決してありません。曲の本質とはメロディや歌手の声なども含むあらゆる要素が集まった全体であり、大げさに言えば、一つが異なれば全てが違う、曲との出会いは一期一会です。大切にしたいです。


013

Black Rock

JAMES BLOOD ULMER ジェームス・ブラッド・ウルマー

【弾ける疾走感】バネのように、躍動感溢れる音楽

 

このアルバムを最初に聴いた時、一曲目のOpen Houseを聴いて、思わずウォーと叫んで走り出したくなりました。ギターとベース、ドラムが一体となって一旦タメを作ってから一気に弾けて走り出す箇所、バネのような展開に聴く人の心も弾けます。意味も無くなんだかじっとしてられなくなってしまいます。

 

James Blood UlmerはOrnette Coleman の下でハーモロディック理論を学んだ後に独立しました。Ornetteとの正式なアルバムのリリースは無かったと思います。このハーモロディック理論というのが謎の理論で、同じ理論に基づいて作られたOrnetteのアルバムと聞き比べてみても似てる所など殆どない。いや、表面上は無いように思われます。

 

ずーっとJAZZのレッテルを貼られているのが不満で、敢えてBlack Rockというタイトルでリリースしたのがこのアルバムです。黒人でロックアーティストといえば、最も有名なのはJimi Hendrixです。James Blood Ulmerもこのアルバムをリリースした頃はJimiの後継者と言われた事がありました。が、実は同い年です。

 

最もJimiを思わせるのは、二曲目Black Rockです。曲の構成無視で、先の見えないハチャメチャな展開がスリリングです。ギターのスタイルは殆ど似てないのに後継者と言われたのはこんな所がJimiを思わせるからではないでしょうか。

 

このアルバムは、メインのJames Blood Ulmerのギターも確かにグッドですが、Amin Aliのベースがカッコ良くて痺れます。

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Electric Ladyland


012

I Often Dream of Trains

ROBYN HITCHCOCK  ロビン・ヒッチコック

【哀愁の緑色】素朴な手作り感100%、アコースティックな心温まるサウンド。

 

CDが出始めた頃、レコード屋さんにはCDコーナーというのがありました。まだCD1枚が3800円くらいもしたので殆ど買う事はなかったのですが、いつもチェックだけはしていました。その時に、この緑色の哀愁味のあるジャケットが何故かメチャクチャ気に入ってしまい、 迷わずレジへ行ってしまいました。いわゆる、ジャケ買いです。

 

なのでRobyn Hitchcockという人がどういう人なのか、当時は全く知りませんでした。実は今でも良く知りません。今はインターネットという便利なものがあるので、Wikipediaをみると、1953年生まれのイギリス人のシンガーソングライターでギタリストだそうです。

 

1曲目はピアノのソロで2曲目からはRobynの歌が入ります。どの曲も非常にアコースティックかつシンプルで手作り感100%です。 殆どの曲がドラムレスで、まるで学芸会での余興みたいな感じです。

 

なかでもCathedral、Flavour Of The Night、Winter Love といった曲は寂しさ感一杯で、緑色の哀愁のジャケット同様の、セピア色の世界が展開されます。そして11曲目、My Favourite Buildingsでピークを迎えます。この曲は、BeatlesというかGeorge Harrisonっぽいメロディも良いのに加え、エンディングでのダブルトラックで録られたギターソロが泣かせます。「僕の好きなビルはみんな壊されている。もう違う町に住んでるみたいだ」。こんな歌を唄うのだから、Robynと言う人は相当に変わった人に違いない!「ビルが僕たちの一部になるまでどれだけ時間がかかるのか誰も知らないんだ」。それにしても、今までにビルの事をこんなに熱く唄ったアーティストっていたでしょうか?


011

Marquee Moon

TELEVISION  テレヴィジョン

【ニューヨーク、ニューヨーク】ニューヨークがそのまま音になったような、スタイリッシュな音楽

 

初めて聴いた時は、NY出身のパンクバンドという事くらいしかTelevisionについては知りませんでした。NYというと、遠く離れた日本に住む者には、オシャレとかインテリジェンス、あるいは、スタイリッシュといった言葉が勝手に浮かびます。

 

確かに聴いてみるとそんな気がする、イメージ通りの音楽でした。1曲目、結構軽やかなリズムのSee No Evilに始まり、金属的な音色の2本のギター、同じNYのTalking HeadsのDavid Burneにも似ているTom Verlaineの甲高い神経質そうなボーカル、パンクバンドながらお洒落な感じもします。

 

特に3曲目のFrictionから4曲目Marquee Moonに続くところは、このアルバムのベストであり、文句なしにかっこいい!ファンキーなギターのリフも良いし、2本のギターが絡み合って独特のサウンドを奏でています。

 

ラストのTorn Curtainはスローでドラマティックな曲で、全然パンクっぽくなく、他の曲とは随分印象が違います。実に幅広い音楽性を持ったバンドでした。

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Remain in Light