ロック・ミュージック 3



030

E2-E4

MANUEL GOTTSCHING マニュエル・ゲッチング

【寄せては返す気持ちの良いリズムの波】CD1枚にたった1曲、永遠に続く海の音を聞いてるみたいなリラックス感

 

どんなにゲーム好きの人でも、負けたら死ぬというルールではとても楽しむどころではないでしょう。金の無い学生時代、レコードを買うという事は一大イベントでした。迷いに迷ってやっと勇気を出して買ったレコードが気にいらないという事は、あってはならない、ちょっと大げさ過ぎるとは言え、その絶望感と後悔はほとんど死に近いくらいでした。今みたいにネットも無い時代だったので、唯一の情報源である雑誌のディスクレビューから、できるだけ安全そうなのを選んで買っていました。Manuel GottschingのE2-E4はたった一曲しか入ってなくしかもインスト、いくら『テクノ、アンビエントの傑作』と書かれていても当時は絶対に選ばないタイプですね。

 

シンプルなチェスの絵のジャケットがアルバムのコンセプトを見事に表しています。単調な繰り返しが基本なのに、フレーズと音色が無茶苦茶耳に心地よいために、聴き続けているとだんだん快感になってきます。ちょうど海辺でリラックスして波の音を聴いてる様な感じです。

 

最初はシンセだけの全く人工的な音から始まり、後半はManuel Gottschingのギターソロが出て来ます。結構弾きまくっているのに、ロック的な泣きのギターではなく、かといってフュージョンとも違う独特のとても軽快な音です。聞き手に特定の感情を抱かせない、どこまでもアンビエント的なアルバムです。

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029

南蛮渡来

暗黒大陸じゃがたら あんこくたいりくじゃがたら

【好き勝手し放題】輸入品だったロックから、日本オリジナルの「日本語ロック/ファンク」

 

日本人が演奏する日本語のロックは、どこかギクシャクした印象でした。実は今でもまだ発展途上だと思っています。リズムにのれず英語混じりの変な歌詞で歌うバンドがほとんどで、たまにそのパターンから外れると「日本人離れした」とか「洋楽みたいな」というフレーズで褒められるのが常でした。「日本語はロックのリズムに合わない」というもっともらしい意見が音楽雑誌に載った事も結構ありました。

 

そんな状況が長く続いた後、突然暗黒大陸じゃがたらのファーストアルバムが発売されました。1曲目の『でも・デモ・DEMO』、何となくコミカルな江戸アケミが歌う「暗いね、暗いね、日本人て暗いね」を聴いてびっくりしました。”日本人離れした”かっこいいファンクのリズムの上に、日本語で、しかも、アジる様に「日本人て暗いね」と歌っている、これまでとは全く次元の違う音楽でした。

 

3曲目の『BABY』、ファンキーなギターのカッテイングが気持ちイイ。続く5曲目の『タンゴ』、”都会のハードボイルドな夜”的雰囲気の曲。「夜を汚そう 白い粉で」、麻薬の事を唄っています。最期の『クニナマシェ』は土着性を感じさせる躍動感溢れるファンクです。別に民謡のリズムを使っているわけでもないのに、盆踊りのように皆が踊っている風景が一瞬頭に浮かびました。もう完全にファンクのリズムを自分たちのものにしています。

 

これを聴き、かっこいい日本語ロックをやるバンドがどんどん増えてくるのでは、という予感が当時はしたのですが、現実には、たいしたフォロワーも出てこず、江戸アケミも精神病院に入ったりして、90年に死んでしまいました。

 

このアルバムは、もはや埋もれた過去の名盤になってしまったのだろうか?発売されてから、既に30年以上も経ってしまいました。若い人に再評価され、フォロワーのバンドが出てきて欲しいと思います。


028

HEJIRA

JONI MITCHELL ジョニ・ミッチェル

【スタイリッシュ】特徴的なベース、ギター、そして声

 

アコースティックから転向を図ったアーティストは結構います。特にJAZZのMiles Davis、フォークのBob Dylan等が有名です。JoniもDylanと同じくフォークから始まりJAZZの有名なミュージシャンをバックにエレクトリックなサウンドへと転向しました。

 

エレキに変わっても彼女の特徴で有る変則チューニングは健在です。ステレオタイプなフュージョンではなく彼女独自のサウンドになっています。それにしてもギターがLarry Carltonで、ベースはなんとJaco Pastorius。ミュージシャンの間でもいかにJoniの才能が認められていたかが、それだけでも分かると思います。

 

1曲目のCoyoteからJacoのベースが大活躍です。独特のフレットレスの響きとハーモニクスの音ですぐにJacoと分かる印象的なイントロは何度聴いても新鮮で興奮します。Cassandra WilsonがカバーしたBlack Crowも、スリリングなイントロに始まり畳み掛けるような早い展開が刺激的です。

 

アルバム全般では、チャート誌に載るヒット曲とはかなり異なり、キャッチーで単純なメロの曲は少ないし歌詞も多いのも親しみやすさから遠ざけている気がします。1回聴いただけではアルバムの良さが伝わらないかも知れません。「ぜひ繰り返し聴いてみて」と多くの人に言いたくなります。必ず愛聴盤になると思うので。

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Blue


027

Discipline

KING CRIMSON キング・クリムゾン

【2本のギターによる不思議サウンド】変拍子と、2本のギターのズレから生じる独特のノリ。

 

ファンというものは飽きやすい反面、アーティストが新しい事を始めるのは大嫌いです。そのために、同じような曲を、アーティストは手を変え品を変え演奏する破目になります。

 

King Crimsonのファンが聞きたいのは、新しいEpitaphやStarlessのような曲であって、全く違う曲をやり出したら総スカンを喰うだけでしょう。

 

ところが、実際にRobert Frippはこのアルバムでそれをやってしまいました。結果は本当に予想通りで、当時のロッキングオンでも非難の嵐でした。これほど酷評されたアルバムは、Led ZeppelinのIn Through the Out Door位しか思い出せません。あれも凄かった。

 

そんな事から離れて、音楽的にはこのアルバムはどうなのでしょうか。あれから数十年が経った今聴いてみると、Robert Frippはひたすら変拍子のフレーズを延々と弾き続け、Adrian Belewの変な音のギターが入る、1曲目のElephant Talkではゾウの鳴き声を真似ている。かなり人工的なサウンドで、それまでのKing Crimsonとはかなり異なります。それでもKing Crimsonという変な先入観がなければ楽しめるアルバムだと思います。特に、The Hun Ginjeetは迫力ある演奏です。

 

何故Crimsonの名前で発表したのか?King Crimsonでなければそこそこ評価されたようにも思われます。もしかしたら単純にRobert Frippの経済的な理由だったのかも知れません。

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Remain in Light

Close to The Edge


026

The River

BRUCE SPRINGSTEEN  ブルース・スプリングスティーン

【労働者階級のヒーロー】パワフルなロックの中で、夢破れた現実を唄う曲が重く響く

 

貧しい家庭や、ごくごく平凡な労働者の家に生まれ、たまたまバンドを作ったら運よくヒットした。こう言う事は良くあると思います。貧しかった時に作った歌は本物だろうが、ヒットすれば当然お金も入り、金持ちになる。いわゆる成金です。そうなっても、労働者クラスの気持ちを代弁する様な歌がつくれるのでしょうか?

 

タイトル曲のThe Riverで、Bruce Springsteenは夢破れた労働者クラスの若者の事を唄っています。「メアリーが17歳の時、高校で出会った。やがて彼女は妊娠した。19歳の誕生日に労働組合のカードをもらい結婚したが、花もウェディングドレスも、はやなかな事は何一つなかった。」と続く、暗い暗いストーリーの曲です。

 

「かなわなかった夢は嘘なのか?」。ずしーんと心に響く、重いフレーズです。Bruceが実際に成金かどうかなんて関係なく、この歌はそんな次元を超えた素晴らしい曲です。

 

シングルカットされたHungry Heartは、オールディーズ調の良い曲ですが、なんだか理解できない歌詞です。「みんなハングリーハートを持っている。金なんか打ち捨てて、やるべき事をやるんだ」というサビは超ポジティブな内容なのに、その主人公は、「バルティモアで結婚して子供もできたけど、ある日家を飛び出したきり、二度と帰らなかった」。えーって感じです。何か昔から叶えたい夢があり、忘れられずに家を飛び出したのか分かりませんけど、残された方の妻と子供は大迷惑です。

 

John Lennonがインタビューで、「最近気に入っている曲はラジオで聴いたHungy何とかってフレーズの男性が唄っている曲だよ」と言っていたらしいので、歌詞には何かもっと深い意味があるのかもしれません。


025

Bachelor No.2 Or the Last...

AIMEE MANN  エイミー・マン

【意志の強さを感じさせる声】知性的な静かな声、クールながらも温かい

 

映画の「マグノリア」を見て主人公の人達が唄うWise Upが直ぐに気に入りました。CDを買おうかと探したのですが、クレジットを見誤ってFiona Appleかと何故か思い込んでしまい、なかなかAimee Mannに辿り着きませんでした。素直にサントラを買えば良かったのに、サントラを買う事が普段ない為無駄な苦労をしてしまいました。

 

このアルバムはアコースティックをベースにしたサウンドで、クールなボーカルとは対照的にとても温かい感じがします。Aimeeの声も落ち着いていて聴いてる方の気持ちもゆったりしてきます。

 

実は、映画自体がAimeeの歌にインスピレーションを受けて作られたそうです。最後はそれなりにハッピーエンドなのが歌と同じ温かい視点を感じます。ただ、彼女の歌を聴いてあそこまで複雑なストーリーを思い付くのは凄いと思いつつも、もう少しシンプルな方が彼女の歌に合ってたかなという気もしました。

 

サントラに使われた曲も多数入っていて、特にシングルカットされたSave Meは本当に良い曲です。CDにはビデオも入っています、残念ながら何故か家のパソコンでは再生できませんでした。更に残念だったのは、最初に気に入ったWise Upが入ってなかった事で、結局はサントラも買ってしまう破目になりました。


024

Trans-Europe Express

KRAFTWERK  クラフトワーク

【人間味溢れる機械音】 最先端だったシンセの音が、今では暖かくてなんだか懐かしい

 

僕は、どちらかというと普段はオーガニックやアコースティックと呼ばれる音を好んで聴いていいます。でも人工的な音が無性に聴きたくなる事が時々あります。そんな時、元祖テクノポップのKraftwerkは選択の対象に入っていません。初めて聴いた時はあれほど強烈だったアナログシンセの音が、今聴くと暖かくて懐かしく人間臭さすら感じます。恐らくエレキギターも世に出た時は凄く人工的に感じたはずなのに、今や「アナログの音代表」と成っているのと同じでしょうか。

 

素朴な電車の音を模擬したタイトル曲のタイトル曲は単調な繰り返しだがなかなかカッコイイ曲です。延々に続きそうなフレーズを聴いているとだんだん気持ちが良くなってきます。そんな中で歌詞の中に、David Bowie やIggy Popが出てきて、少しにんまりしてしまいます。

 

ドイツのテクノポップと黒人音楽とではどうしても結び付きませんが、Afrika Bambaataaが使用して、この音がHIP HOPの原点の一つとなりました。


023

The Heart of Saturday Night

TOM WAITS  トム・ウェイツ

【センチメンタル&メランコリー】真夜中に響く、酔っ払い詩人のしわがれた歌声

 

ラジオでBlue Valentineを初めて聞いたとき、 すぐに気に入りレコード屋さんへ買いに行きました。残念ながら置いてなくて、かわりにこのアルバムを買って帰り、それ以来のお気に入りです。今でも、深夜に一人で聴いてしんみりとする時があります。

 

このアルバムの曲は、どれもジャジーでメロディがとても綺麗です。「酔いどれ詩人」Tomの歌い方も、スタイリッシュでカッコ良く、若い時なので声も今ほどしゃがれていません。

 

聴いていて、不思議に懐しい感じがする所があります。することがなくて意味も無く毎日呑んでいた頃を突然思い出したりして、恥ずかさと懐しさが混った本当に言葉にはできない感じがこみ上げてきます。こういう感情をメランコリックとかノスタルジックと言うのでしょうか。

 

San Diego SerenadeやThe Heart Of Saturday Night、Shiver Me Timbers、Please Call Me, Baby、Drunk On The Moon等、挙げればほぼアルバム全曲になってしまう程、お気に入りの曲がいっぱいでです。 同じ様な曲が続くのに、退屈しないで最後迄聞ける数少ないアルバムです。

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022

Welcome to the Cruel World

BEN HARPER ベン・ハーパー

【静かな革命】静かに静かに、リスナーの心の奥から変化させていく

 

どんなアーティストでも、大抵のファーストアルバムが好きです。ファーストアルバムは、そのアーティストのアマチュア時代のベストアルバムなので曲が良い事が多い。このアルバムも素晴らしいです。もう随分昔に「強力新人デビュー。超お勧め盤」と黄色いレコード屋さんに宣伝の紙が張ってあり、 ジャケットを見るとなかなかいい感じだったのでジャケ買いをしてしまいました。ホント、正解でした。

 

1曲目はギターのインスト。この曲を聞くと草原の中で日射しを浴びている風景が何故か頭に浮んでくる。アルバム全体の良さを予感させる、素晴らしいオープニングです。

 

2曲目以降はBen Harperの歌が入ります。彼の歌声は線が細くてちょっと頼りなく神経質な感じです。静かにうつむいているジャケと重なりとてもナイーブな人という印象です。それがアコースティックなサウンドと良く合っていると思います。アップテンポとスローな曲が交互に現れてきます。Don't Take That Attitude To Your GraveやForever、Waiting On An Angelなどの弾き語りがお気に入りです。独特の寂しさ感が心に染みます。

 

中でもWalk Awayという曲が大好きです。とてもとても地味なメロディーと演奏で、全然盛り上らない曲なのですが、 何故か繰り返し聞いてしまいます。「また日が昇った。友よ、君がいない日って意味でもある。」こんな曲がアルバムに入っているので、やはりシングル・ヒット曲だけ聴いていると損をします。「言うのは簡単だけど、やってみるのは難しい。でも、時々、時々だけど、君はいなくなるべきだって思うんだ。これまで多くの人を好きになってきたのに、なんでたった一人の事でこんなに悩むんだろ」

 

Benも今ではFUJI ROCKに 出る程日本でもメジャーになってしまいましたけど、 ジャケットしか情報が無く、あの貼り紙を見て買おうかどうか悩んだ頃が懐しい!

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021

Carney

LEON RUSSELL レオン・ラッセル

【渋い声とサウンド】特徴的な渋い声、大人のロックを実感

 

昔、ビールか何かのCMにSong for Youが使われて一瞬リバイバルブームが起こりました。僕は、昔からLeon Russellのしわがれた声が大好きで、Neil Youngと同じく万人向けではないですが何故かストレートに琴線に触れます。

 

音楽の要素、メロディとリズム、ハーモニーに加えて、Leonの曲は彼の声がなければいけません。実は、Carpentersもカバーする程Leonの曲の良さには定評が有ります。それでも、誰がカバーしてもその魅力は半減してしまいます。それほど素晴らしく声と曲がマッチしています。このアルバムの1曲目のTight Ropeがるぎようのない名曲なのは間違いなくても、この声で唄われなければここまで良いとは思いません。実際にこの曲のカバーを聴いたことが無くても、そう確信しています。

 

ところで、ある曲が強烈に良過ぎると、その曲ばかりを聴いて他の曲を聴かなくなることがあります。このアルバムだと、Tight Ropeから同じくらい名曲のThis Masqueradeまで飛ばしてしまいます。CDの功罪です。じっくり聴けば、2曲目以降も渋くて良い曲が続く事が分かり益々このアルバムが好きになるのに。。

 

最後のMagic Mirrorは個人的に大好きな曲です。とても良い曲と思いますが地味過ぎる為、当然ベストアルバム等に入るような曲ではありません。でもこれを聴くと、必ずまた1曲目のTight Ropeが聴きたくなります。

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