ロック・ミュージック 4


The White Stripes ザ・ホワイト・ストライプス

ロックバンドで最少人数と言えば、普通はベースとギター、ドラムの3人組です。ところが、White StripesはギターのJack WhiteとドラムのMeg Whiteの二人組で、ベースがいません。たった二人で音を組み立てていきます。スタジオミュージシャンを追加せず、メロディーを演奏できるのはギターだけですから、Jackはもの凄いテクニシャンです。多くのミュージシャンからも称賛されています。

 

1曲目のJimmy The Exploder、もうメチャクチャにカッコ良い、素晴らしすぎるギターのリフに、甲高いJackのボーカル、完全にノックアウトされます。2曲目はStonesもExile On Main StreetでカバーしていたRobert JohnsonのStop Breaking Down。この2曲を聴けば、もう速攻で永遠の愛聴盤になる事間違いなしです。

 

White Stripesを聴くと、有名ではないLed Zeppelinの曲がいつも頭の中に浮かびます。IVのB面やAchilles Last StandとTea For One以外のPresenceの曲と言えば、分かりやすいでしょうか。ソリッドなギターのリフ中心な所が似ているように思います。

 

このデビューアルバムは、短い曲が19曲、畳みかけるように、全くだれることなく、一気に進んでいきます。Jackは「最も生々しくて最もパワフル、いまだにファーストを超えられない」とインタビューで言っています。


038

Brilliant Trees

DAVID SYLVIAN デヴィッド・シルヴィアン

【墨絵のサウンド】Japan解散後にDavid Sylvianが作った、絵画のような静的なアルバム

 

JapanはMick Karnのフレットレースベースが好きでした。フレットレスのベースは、Joni Mitchellのアルバムで聴かれるJacoやBrian Enoのアルバムで聴かれるPercy Jonesなど、ユニークなサウンドが多いです。

 

Japanを解散し、David Sylvianがソロを出すと聞いたとき、Mick Karn抜きのJapanサウンド、まるで炭酸の抜けたビールの様な音を創造しましたが、全く予想は外れました。このアルバムは傑作です!もう何度聴いたか分かりません。

 

1曲目のPulling Punches、Japanの人工的なシンセサウンドと違い、もう少し質量感のある生音が特徴です。実際にはサンプリングかもしれず少々勘違いかもしれませんが。2曲目のInk in the Wellは、ウッドベースがかっこいい。3曲目のNostalgiaはタルコフスキーの映画と何か関係があるのでしょうか?あの映画の雰囲気を音で現したと言われても疑問に思わない、素晴らしい曲です。

 

5曲目のWeathered Wallから、昔でいうとB面は更にアンビエントっぽくなり、絵画的で静かなサウンド、まるで水墨画のような作品です。


037

無罪モラトリアム

椎名林檎 しいなりんご

【ひらがなのロック】漢字からひらがなが生まれた様に、輸入品のロックから日本語のロックが完成

 

かつて日本人は文字をもっていませんでした。中国から漢字を輸入しましたが、和歌など日本の文化に合わず、相当な苦労の末、ひらがなを発明しました。

 

このアルバムを聴いていると、そんな事が頭に浮かびました。ロックが輸入され多くの日本人ロッカーが誕生しましたが、日本オリジナルの音楽としての完成形を女性アーティストが示してくれたのがこのアルバムです。まさに、ひらがなのロックです。

 

1曲目の『正しい街』はノイジーなギターで始まりますが、曲調はメロディアスで聞きやすい曲です。歌詞は意味不明なのに、「都会では冬の匂いも正しくない」、断片的に聞き取れるフレーズがとても印象的です。。2曲目の『歌舞伎町の女王』は、歌謡曲風のメロディ。歌舞伎町の女王と呼ばれた母が自分を捨てて男と出て行き、自分が新しい歌舞伎町の女王となるという、ストーリー仕立ての歌詞です。

 

3曲目が『丸の内サディスティック』。歌詞はとことん意味不明でナンセンス、語呂合わせやダブルミーニングなど、言葉を楽しそうにもて遊んでいる感じがします。冒頭のキーボードの音もクールで、コード進行がカッコよく、終わりにはジャズ風のスキャットも入る、このアルバムのベストトラックです。他の曲も良い曲なのは間違いなくても、この3曲はアルバムのなかでも特にかっこいい!

 

椎名林檎が、ひらがなを駆使して名作を書いた紫式部や清少納言のように思えてきました。結局この国のオリジナルは、女性が作っている!


035

Runt: The Ballad of Todd Rundgren

TODD RUNDGREN  トッド・ラングレン

【ポップミュージックとは?という問いの回答】なぜだろう、3分程度のシンプルな曲がたまらなく心に響く

 

Todd RundgrenはBeatlesマニアで、一部の人達からはポップミュージックの天才と呼ばれています。奇人/変人でも有名な人で、このアルバムのジャケット写真でも首を吊った姿で写っています。となると、どんなに変わったアルバムかと誤解されそうですが、アップテンポの曲と静かなバラードが程よくミックスされたポップミュージックのお手本のような作品です。

 

特にタイトルにするだけあって2曲目のThe Ballad (Denny & Jean)や4曲目のWailing Wallなどはバラードの超名曲です。どの曲も非常にポップなのに、後期のようにアレンジに凝りすぎて変な展開に突入する事も、奇抜なシンセの音が入る事もなく、シンプルでサラッと印象です。

 

ポップミュージックは3分間の使い捨て娯楽品と称される事があります。確かに今のヒットチャートをみると、目まぐるしい速さでトップテンが入れ替わりあっという間に古臭くなって忘れ去られていきます。1ヶ月間だけヘビィーローテーションの後は、もう二度とラジオでかかる事はありません。

 

ところが、何十年も前にリリースされたにもかかわらずこのアルバムは古くならず静かに輝いています。たかだか三分間の消耗品である大昔にリリースされたポップミュージックが、今聴いてもここまで心に沁みるのは本当に不思議です。


034

Nashville Obsolete

Dave Rawlings Machine デイビット・ローリングズ・マシーン

名前にマシーンなんて付いているので、無機質な電子音を想像する人もいるかもしれません。本当は、現在生で聴ける最高にオーガニックなサウンドの一つです。

 

まず、1曲目のThe Week Endを聴いて見て下さい。こんなにリリカルで胸を打つサウンドは本当に驚きです。Daveは、パートナーのGillian Welch(ギリアン・ウェルチ)と一緒に、息の合った演奏とハーモニーを聴かせてくれます。

 

次の曲はShort Haired Woman Blues。印象的なアコースティックギターのイントロを聴くだけで、良い曲だというのが分かります。この寂寥感は、Neil Youngに似ています。そういえば、前作ではNeilのCortez The Killerをとてつもなく美しくカバーしていました。と、こんな感じで、全く捨て曲無しで全9曲があっという間に終わってしまいます。

 

ここまで書いてきて、「生で聴きたい」と猛烈に思いました。でも、最近のチケット代の高騰 を考えると、買えるような値段に収まってくれるか心配です。You Tubeのライブ映像で我慢するしかないのでしょうか。寂しいですね。

 


033

Roman Candle

ELLIOTT SMITH エリオット・スミス

【夜空に輝く小さな星】静かで美しい曲、夜空の星を眺めるような落ち着いた気持ちにさせる

 

最初Costelloが絶賛と聞いて買ってみると、実はRon Sexsmithの事でElliott Smithでは無い事が分かりました。勝手に勘違いしていたのですが本当に良かったと思う、その御陰でこのアルバムに出会う事ができました。

 

最近のアーティストはリスナーを飽きさせないようにバラエティに富んだアルバム作りをします。特にソロのアーティストは、一曲事に曲調を変えてミュージシャンも変え、プロデューサーも変える、手を変え品を変え何とか一枚持たそうという感じです。ところがこのアルバムは、ほとんどギターだけでちょっと地味で暗めの同じ様な曲が並んでいます。最近のアルバム作りとは正反対の感じなのに、全く飽きずに最後まで聴かせます。曲の良さとElliottの静かな歌だけあれば他には何もいらない、という気持ちになります。

 

驚くべき事に、アルバム中半分の曲はタイトルがありません。Elliottがなぜタイトルを付け無かったのかは分かりません。本人は作品の出来に満足していなかったのでしょうか、心に染みる曲ばかりなのに。名前を付けてもらえなかったなんて、ちょっと可哀そうな気がします。中でもそのタイトルが無くNo Nameと名付けられた#1から#4が最高です。

 

バラエティに富んでいるのに、全曲覚えているアルバムは最近ではほとんどありません。このアルバムを聴いた後では、そんな風に途方も無くお金をかけたアルバムが本当に薄っぺらい音に聴こえてきます。


032

Rickie Lee Jones リッキー・リー・ジョーンズ

【不思議な魅力の声】大人の音楽、夜ひとりで

 

くわえ煙草でポーズを決めた印象的なジャケットからは低音のハスキーなボイスを想像してしまいます。実際のRickie Lee Jonesの声は文字にし難い不思議な声です。声変わりする前の少年か少女の様でも有り、反対に堪らなくセクシーな時も有ったりします。

 

アップテンポもスローな曲もアコースティックが基本ですが、ロックにジャズが混ざったような、声と同様に不思議なサウンドです。そういう所は昔の恋人のTom Waitsに似ています。やっぱり影響されたのでしょうか。

 

1曲目はヒット曲のChuck E.'s in Love、キャッチーなメロでヒットしたのも当然という曲です。途中スローテンポになる所がお気に入りです。Young Bloodもキャッチーなイントロで始まる印象的な曲です。ホーンも入って楽しくなってきます。次の曲がウッドベースを使ったジャジーで小粋な感じなのもいかしてます。

 

他のどの曲よりも素晴らしいのが10曲目のCompanyです。スローな曲調を歌い上げるRickieの声がとても素敵です。チョット悲しい内容ですが『いまでも友達だよ』と唄う所が心に滲みます。


031

Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators

13TH FLOOR ELEVATORS 13THフロアー・エレヴェイターズ

【トクトクトク……】 シンプルなロックサウンドの後ろで流れる不気味な音色

 

サイケデリックミュージックは、ドラッグをやった時の意識の変容を音楽で再現しようとしたものです。けれども、聴いてる方はドラッグ体験が無いと本当に上手く再現されているのか全く分かりません。結局理論的な裏付けがある訳でもないので、アイデアかセンスの勝負みたいな所があります。

 

この13th Floor Elevatorsの如何にもサイケデリックというジャケットのアルバムは、典型的なアイデア一発勝負型です。或る一点を除けば、普通のガレージバンドです。本当にシンプルな音は、Kinksや初期のStonesを思い起こします。だけどもその後ろで鳴る不気味な音色、ジャグという名前の楽器だそうです。これだけで何となく普通じゃない、サイケデリックっという雰囲気を限り無く醸し出しています。さすがにトリップはしませんが、聴いてると不思議な気持ちになってきます。

 

高価なシンセサイザー等を使わなくても、素朴なアイデアだけで十分サイケデリックミュージックができる見本の様なアルバムです。ホント、世の中お金をかければ良いというものではありません。