ロック・ミュージック 4


040

Movie

HOLGER CZUKAY ホルガー・シューカイ

ある年代の人は、スネークマンショーでHolger Czukayを知ったという方が多いと思います。僕もそうでした。当時はレコードを買えなくて、FMのエアチェックをカセットで聴いていました。あれから数十年が経ち、Holger CzukayのMovie!は何故か中々CDが再発されず手軽に入手できなかったため、自分の中ではすっかり忘れていたアーティストでした。

 

ところが、今年再発されていた事をたまたま知りました。ジャケットが変わっていたので全然気が付きませんでした。何でジャケットを差し替えたのでしょうか。

 

1曲目のCool in the Poolを早速聴いてみると、ちょっと思っていたのと違う飄々とした雰囲気のファンクサウンドで驚きました。と言っても、もはやどんな音楽だったか殆ど覚えていなかったのですが、かすかな記憶ではもっとコラージュっぽい実験的なサウンドのはずでした。軽くポップな感じが気持ち良いです。ゲストボーカリストのクレジットが無いので、これ本人が歌っているんでしょうか。サウンドにとても合っています。

 

3曲目は、とうとうスネークマンショーに入っていたPersian Loveです。このアラビアっぽいメロディとラジオ放送のコラージュ、文字にすると記憶の通りなのに、なんか「そうそう、これだった!」という感じが全然しません。人間の記憶って頼りないですね。カセットで聴いていた曲は本当にこれだったのかすら自信が無くなってきました。

 

それはそれとして、良い曲です。キャッチーでかわいらしいとも言えるメロディアスな曲は当時ヒットしたのもうなずけます。ホント、このアルバムは実験的な面とポップな面がうまい具合にミックスされた、GOODな出来栄えです。


039

The White Stripes ザ・ホワイト・ストライプス

ロックバンドで最少人数と言えば、普通はベースとギター、ドラムの3人組です。ところが、White StripesはギターのJack WhiteとドラムのMeg Whiteの二人組で、ベースがいません。たった二人で音を組み立てていきます。スタジオミュージシャンを追加せず、メロディーを演奏できるのはギターだけですから、Jackはもの凄いテクニシャンです。多くのミュージシャンからも称賛されています。

 

1曲目のJimmy The Exploder、もうメチャクチャにカッコ良い、素晴らしすぎるギターのリフに、甲高いJackのボーカル、完全にノックアウトされます。2曲目はStonesもExile On Main StreetでカバーしていたRobert JohnsonのStop Breaking Down。この2曲を聴けば、もう速攻で永遠の愛聴盤になる事間違いなしです。

 

White Stripesを聴くと、有名ではないLed Zeppelinの曲がいつも頭の中に浮かびます。IVのB面やAchilles Last StandとTea For One以外のPresenceの曲と言えば、分かりやすいでしょうか。ソリッドなギターのリフ中心な所が似ているように思います。

 

このデビューアルバムは、短い曲が19曲、畳みかけるように、全くだれることなく、一気に進んでいきます。Jackは「最も生々しくて最もパワフル、いまだにファーストを超えられない」とインタビューで言っています。


038

Brilliant Trees

DAVID SYLVIAN デヴィッド・シルヴィアン

【墨絵のサウンド】Japan解散後にDavid Sylvianが作った、絵画のような静的なアルバム

 

JapanはMick Karnのフレットレースベースが好きでした。フレットレスのベースは、Joni Mitchellのアルバムで聴かれるJacoやBrian Enoのアルバムで聴かれるPercy Jonesなど、ユニークなサウンドが多いです。

 

Japanを解散し、David Sylvianがソロを出すと聞いたとき、Mick Karn抜きのJapanサウンド、まるで炭酸の抜けたビールの様な音を創造しましたが、全く予想は外れました。このアルバムは傑作です!もう何度聴いたか分かりません。

 

1曲目のPulling Punches、Japanの人工的なシンセサウンドと違い、もう少し質量感のある生音が特徴です。実際にはサンプリングかもしれず少々勘違いかもしれませんが。2曲目のInk in the Wellは、ウッドベースがかっこいい。3曲目のNostalgiaはタルコフスキーの映画と何か関係があるのでしょうか?あの映画の雰囲気を音で現したと言われても疑問に思わない、素晴らしい曲です。

 

5曲目のWeathered Wallから、昔でいうとB面は更にアンビエントっぽくなり、絵画的で静かなサウンド、まるで水墨画のような作品です。

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Tin Drum


037

無罪モラトリアム

椎名林檎 しいなりんご

【ひらがなのロック】漢字からひらがなが生まれた様に、輸入品のロックから日本語のロックが完成

 

かつて日本人は文字をもっていませんでした。中国から漢字を輸入しましたが、和歌など日本の文化に合わず、相当な苦労の末、ひらがなを発明しました。

 

このアルバムを聴いていると、そんな事が頭に浮かびました。ロックが輸入され多くの日本人ロッカーが誕生しましたが、日本オリジナルの音楽としての完成形を女性アーティストが示してくれたのがこのアルバムです。まさに、ひらがなのロックです。

 

1曲目の『正しい街』はノイジーなギターで始まりますが、曲調はメロディアスで聞きやすい曲です。歌詞は意味不明なのに、「都会では冬の匂いも正しくない」、断片的に聞き取れるフレーズがとても印象的です。。2曲目の『歌舞伎町の女王』は、歌謡曲風のメロディ。歌舞伎町の女王と呼ばれた母が自分を捨てて男と出て行き、自分が新しい歌舞伎町の女王となるという、ストーリー仕立ての歌詞です。

 

3曲目が『丸の内サディスティック』。歌詞はとことん意味不明でナンセンス、語呂合わせやダブルミーニングなど、言葉を楽しそうにもて遊んでいる感じがします。冒頭のキーボードの音もクールで、コード進行がカッコよく、終わりにはジャズ風のスキャットも入る、このアルバムのベストトラックです。他の曲も良い曲なのは間違いなくても、この3曲はアルバムのなかでも特にかっこいい!

 

椎名林檎が、ひらがなを駆使して名作を書いた紫式部や清少納言のように思えてきました。結局この国のオリジナルは、女性が作っているのか?


036

The Nightfly

DONALD FAGEN   ドナルド・フェイゲン

【永遠に音が良い代表】Steely Dan解散後に発売したアルバムは、快感にまでなる程の「音の良さ」

 

「音が良い」というのは不思議な感覚です。確かに、テクノロジーが未熟な頃は、録音技術などが進化するたびに新しいレコードの音が良くなったと感じた時期があったと思います。例えば、BeatlesのファーストアルバムPlease Please MeからラストアルバムのAbbey Roadまで順に聴いて行くと、どんどん音が良くなっているのがはっきりと分かります。Please Please Meを聴くと、明らかに帯域が狭い変な音です。恐らく、録音機器の制約から高音部や低音部なりがカットされてしまった事の影響なのでしょう。

 

The Nightflyの発売当初、1曲目の I.G.Y.のイントロを聴いたときに、ここまでレコードの音が良くなったのかと感動しました。しかも既に30年近く経ったいま聴いても、「音がいいなあ」という感想が出てきます。今のアーティストが発売するアルバムを聴いてもこんな感想は出てこない、一体、「音が良い」と思う感覚は何なのか分からなくなります。

 

 I.G.Y.に始まり、軽快なリズムのGreen Flower Street、ドゥーワップ調のRuby Babyに続き、昔でいうA面ラストのMaxineになります。スローなバラードで、Donald Fagenの多重ボーカル、間奏のMichael Breckerのテナーも素晴らしく、このアルバムのハイライトです。

 

人は、ほんのちょっとしたエコーの具合とかピッチとか些細な所に「音の良さ」を感じるのかもしれません。このアルバムはそういう所に尋常でなく気を使ったアルバムなのかもしれないです。自分的な「音が良い」アルバムNo.1の座はこれかRoxy MusicのAvalonかという感じです。たとえデジタル録音が10万ビットになったとしても、この先も恐らくその地位は不動でしょう。


035

Runt: The Ballad of Todd Rundgren

TODD RUNDGREN  トッド・ラングレン

【ポップミュージックとは?という問いの回答】なぜだろう、3分程度のシンプルな曲がたまらなく心に響く

 

Todd RundgrenはBeatlesマニアで、一部の人達からはポップミュージックの天才と呼ばれています。奇人/変人でも有名な人で、このアルバムのジャケット写真でも首を吊った姿で写っています。となると、どんなに変わったアルバムかと誤解されそうですが、アップテンポの曲と静かなバラードが程よくミックスされたポップミュージックのお手本のような作品です。

 

特にタイトルにするだけあって2曲目のThe Ballad (Denny & Jean)や4曲目のWailing Wallなどはバラードの超名曲です。どの曲も非常にポップなのに、後期のようにアレンジに凝りすぎて変な展開に突入する事も、奇抜なシンセの音が入る事もなく、シンプルでサラッと印象です。

 

ポップミュージックは3分間の使い捨て娯楽品と称される事があります。確かに今のヒットチャートをみると、目まぐるしい速さでトップテンが入れ替わりあっという間に古臭くなって忘れ去られていきます。1ヶ月間だけヘビィーローテーションの後は、もう二度とラジオでかかる事はありません。

 

ところが、何十年も前にリリースされたにもかかわらずこのアルバムは古くならず静かに輝いています。たかだか三分間の消耗品である大昔にリリースされたポップミュージックが、今聴いてもここまで心に沁みるのは本当に不思議です。

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Skylarking


034

On And On

JACK JOHNSON ジャック・ジョンソン

【ハワイの朝のよう】休日の朝、静かな海岸をリラックスして眺めている感じ

 

「メローな感じ」、このアルバムを聴いたとたん真っ先にその言葉が頭に浮かびました。

 

本当にリラックスできる音楽です。朝早く誰もいない夏の海岸の風景がイメージされます。単にこれは『JACKが元ハワイのサーファのチァンピオンで怪我をしてからアーティストに転向』といった情報が事前にインプットされているからかもしれません。

 

アコースティックなサウンドという点ではBen Harperと似ています。どちらも素晴らしい音楽です。Benのボーカルはナイーブでやや神経質な所が有るのに対して、Jackは落ち着いた感じで、またまた使ってしまいますがよりメローです。

 

1曲目のTimes Like TheseからTraffic In The Sky、Gone等まるで心地良い波に揺られ浮かんでいるような気持ちの良さです。最もお気に入りは14曲目のCocoonです。なんか柔らかくて気持ちの良いものにすっぽりくるまれているような、まさにズバリの内容です。

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Welcome to the Cruel World


033

Roman Candle

ELLIOTT SMITH エリオット・スミス

【夜空に輝く小さな星】静かで美しい曲、夜空の星を眺めるような落ち着いた気持ちにさせる

 

最初Costelloが絶賛と聞いて買ってみると、実はRon Sexsmithの事でElliott Smithでは無い事が分かりました。勝手に勘違いしていたのですが本当に良かったと思う、その御陰でこのアルバムに出会う事ができました。

 

最近のアーティストはリスナーを飽きさせないようにバラエティに富んだアルバム作りをします。特にソロのアーティストは、一曲事に曲調を変えてミュージシャンも変え、プロデューサーも変える、手を変え品を変え何とか一枚持たそうという感じです。ところがこのアルバムは、ほとんどギターだけでちょっと地味で暗めの同じ様な曲が並んでいます。最近のアルバム作りとは正反対の感じなのに、全く飽きずに最後まで聴かせます。曲の良さとElliottの静かな歌だけあれば他には何もいらない、という気持ちになります。

 

驚くべき事に、アルバム中半分の曲はタイトルがありません。Elliottがなぜタイトルを付け無かったのかは分かりません。本人は作品の出来に満足していなかったのでしょうか、心に染みる曲ばかりなのに。名前を付けてもらえなかったなんて、ちょっと可哀そうな気がします。中でもそのタイトルが無くNo Nameと名付けられた#1から#4が最高です。

 

バラエティに富んでいるのに、全曲覚えているアルバムは最近ではほとんどありません。このアルバムを聴いた後では、そんな風に途方も無くお金をかけたアルバムが本当に薄っぺらい音に聴こえてきます。

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Pink Moon


032

Rickie Lee Jones リッキー・リー・ジョーンズ

【不思議な魅力の声】大人の音楽、夜ひとりで

 

くわえ煙草でポーズを決めた印象的なジャケットからは低音のハスキーなボイスを想像してしまいます。実際のRickie Lee Jonesの声は文字にし難い不思議な声です。声変わりする前の少年か少女の様でも有り、反対に堪らなくセクシーな時も有ったりします。

 

アップテンポもスローな曲もアコースティックが基本ですが、ロックにジャズが混ざったような、声と同様に不思議なサウンドです。そういう所は昔の恋人のTom Waitsに似ています。やっぱり影響されたのでしょうか。

 

1曲目はヒット曲のChuck E.'s in Love、キャッチーなメロでヒットしたのも当然という曲です。途中スローテンポになる所がお気に入りです。Young Bloodもキャッチーなイントロで始まる印象的な曲です。ホーンも入って楽しくなってきます。次の曲がウッドベースを使ったジャジーで小粋な感じなのもいかしてます。

 

他のどの曲よりも素晴らしいのが10曲目のCompanyです。スローな曲調を歌い上げるRickieの声がとても素敵です。チョット悲しい内容ですが『いまでも友達だよ』と唄う所が心に滲みます。


031

Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators

13TH FLOOR ELEVATORS 13THフロアー・エレヴェイターズ

【トクトクトク……】 シンプルなロックサウンドの後ろで流れる不気味な音色

 

サイケデリックミュージックは、ドラッグをやった時の意識の変容を音楽で再現しようとしたものです。けれども、聴いてる方はドラッグ体験が無いと本当に上手く再現されているのか全く分かりません。結局理論的な裏付けがある訳でもないので、アイデアかセンスの勝負みたいな所があります。

 

この13th Floor Elevatorsの如何にもサイケデリックというジャケットのアルバムは、典型的なアイデア一発勝負型です。或る一点を除けば、普通のガレージバンドです。本当にシンプルな音は、Kinksや初期のStonesを思い起こします。だけどもその後ろで鳴る不気味な音色、ジャグという名前の楽器だそうです。これだけで何となく普通じゃない、サイケデリックっという雰囲気を限り無く醸し出しています。さすがにトリップはしませんが、聴いてると不思議な気持ちになってきます。

 

高価なシンセサイザー等を使わなくても、素朴なアイデアだけで十分サイケデリックミュージックができる見本の様なアルバムです。ホント、世の中お金をかければ良いというものではありません。