ソウル・ミュージック 2


019

Good Woman Turning Bad

HOT SAUCE FEATURING RHONDA WASHINGTON  ホット・ソース フィーチャリング ロンダ・ワシントン

Rohnda Washingtonという全然名前を知らなかった歌手をフィーチャーしたHot Sauceを聴いた時は驚きでした。自分の中の基準では、ソウル歌手はまず声、そして歌いまわし。そのどちらも、このRohndaはずば抜けていました。1曲目の歌い出しを聴いただけで、ノックアウトされお気に入りになりました。

 

1963年に、Rohndaは、セントルイスのドゥーワップグループのEl Torrosに加わりました。パッとせずに1966年にデトロイトに戻ってきて、その後、1971年にWilliam CallwayとGlynton Ashleyとのボーカル・トリオで、Hot Sauceを作ります。

 

その年の8月にレコードデビューします。I'll Kill A Brick(About My Man)とI Can't Win For Losingのカップリングです。I'll Kill A Brick(About My Man)でのRohndaのボーカルをsassy and slightly threatening vocal(生意気で若干脅迫的な声)とライナーノーツは表現しています。

 

その後、二人が抜け、Rohndaのソロ・ボーカルとなって、2枚目のシングルBring It Home(And Give It To Me)をEchoes Of The Pastとのカップリングを発売します。R&Bチャートで35位、Hot 100で96位と健闘します。

 

その後もシングルを数枚発表しますが、チャート的には振るいません。しかも、所属レコード会社のVoltは借金で回らなくなり、予定していたアルバムリリースのキャンセルが相次ぎます。Hot Sauceも結局、アルバムは一度もリリースせずに終わってしまいました。

 

その後の、Rohndaの行方は全く不明です。恐らく、デトロイトのゴスペルシーンに戻ったのではないかとライナーノーツでは書かれています。こんな声を持っているだけで成功が約束されている気がするのに、世の中は本当に不思議です。


018

On the Rainbow Road

BILL BRANDON ビル・ブランドン

Bill Brandonはサザンソウル歌手の中でも最も過小評価されている一人です。Bill Brandonは1943年アラバマ生まれ。トランペットやギターにドラム等いくつかの楽器を習っていました。当時の他のソウル歌手と異なり彼は教会で唄ったことはありませんでした。

 

「寝室でレコードに合わせて唄う練習をしていたよ、人前じゃなくてね」

 

彼はR&BやSam Cookeのようなゴスペルと同じようにビッグバンドの音楽も好きでした。高校では、The Cometsというグループを作り、ギターと歌を担当していて、1965年に初めてのレコーディングセッションを経験しました。Billは、70マイルほど離れた町にスタジオをもっていたプロデューサーのQuin Ivyを紹介されます。そして、1969年までに5回のセッションで16トラックを吹き込みました。なぜか選ばれた数曲だけがシングルとして発売されています。

 

このアルバムは、そのQuin Ivyとのセッションの曲から1970年代中期までの合計24曲が入ったお得版です。

 

 

Spooner Oldhamのプロデュースワークが光る1曲目のSelf Preservationは美しさにハッとするカントリーバラードです。騒々しいアップテンポの2曲目のFull Grown Lovin' Mainはダンスフロアーナンバーとしてとても優れています。Dan PennとDonnie Frittsが書いたArthur Alexanderに書いた3曲目のRainbow Roadは、うねうねするフレーズのトランペットと素晴らしいリズム隊のおかげで、Arthurのバージョンのはるかに上を行っています。

 

1971年にQuin Ivyがレコードの販売を止めると、BillはClintoneとMoonsongというレコードレーベルを運営していたShowtime Productionsと契約します。Showtimeには、Sam DeesとFrederick Nightという素晴らしい器量のソングライターがいて、Roszetta Johnsonが既に歌手としていました。

 

ここでBillは70年代初期に5枚シングルを出しています。Billの個人的なお気に入りは、ゴスペルどっぷりな11曲目のI'm A Believer Nowです。

 

結局、Billは大して売れずに、ディスコ時代に突入した1977年にLPを1枚出した後、1987年に引退して、長距離トラックの運転手になってしまいました。こうしてこのアルバムを聴いてみるとどれも素晴らしい出来栄えで、何かが足りないという感じは全然しません。図らずもこのようなCDが発売されているのですから、もっといろいろな人にBillの音楽を聴いて欲しいと思います。


017

Soul Children / Best of Two Worlds

SOUL CHILDREN ソウル・チルドレン

いくら走攻守が優れていると言っても、全員「4番打者」を揃えてしまったら野球は勝てません。ところが、Soul Childrenはソロ歌手でも充分やっていける実力があるリードシンガーを4人もそろえてしまいました。結果はどうでしょう。これがもう素晴らしい出来栄えです。

 

Soul ChildrenはIssac HayesとDavid Porterの妙案から生まれました。二人は、1968年に契約を失ったSam and Daveの後釜のアーティストを探していました。まず最初に見つけたのは、John Collbert、別名の J. Blackfootの方が有名かもしれません。「爽やかなダミ声」ってタイプです。理由は定かではありませんが、二人はソロアーティストとしてもBlackfootに満足できませんでした。問題を話し合っているうちに、二人は、Sam and Daveのデュエット形式を踏襲し、さらに発展させて、男女二人の4人組という独創的なアイデアを思いつきました。

 

二番目に採用したアーティストはNorman West、1963年からメンフィスでプロとして歌っていました。一方、女性歌手は、地方の黒人ラジオ局WDIAで由緒あるTeen Town Singersで歌っていた17歳のAnita Louisの声にPorterが惚れて、Anitaの母親からOKを貰いました。「伸びのある迫力満点」の声です。その頃、グループ四番目のメンバーはShelbra Bennett、オーディションを求めてスタックスのスタジオに向かって歩いていました。

 

こうやって集まった四人で、バラードのI'll UnderstandとアップテンポのGive 'Em Loveを吹き込みました。

 

このCDは、セルフタイトルのファーストアルバムとセコンドアルバムBest of Two Worldsが1枚になった20曲入りのお得版です。ファーストは先の2曲を含む10曲で、シングルカットした曲はチャート的にはかなり好調でした。I'll Understandは不倫ソングで、Blackfootのリードに他の三人がレスポンスを歌う、HayesとPorterがSam and Daveで作った典型的なフォーマットでR&Bチャート40位です。The Sweeter He is はR&Bチャート7位です。ホーンとピアノ、リズム隊で始まり、BlackfootとWestのあーシーな「ウ~ウウ~」とファルセットで歌い出し、Anitaが最初の1節を歌い、Shelbraが2番目の1節を歌います。Soul Childrenは、リードが次々と変わるのが特徴です。Super SoulはBlackfootがOtis Reddingを思わせるような歌い方が特徴です。

 

セカンドアルバムは、チャート的にはパッとしませんでした。Hayesがソロとなったため、Porterが新しく見つけたRonnie Williamsとのコンビの曲が殆どです。曲の出来栄えは、ファーストと変わらないと思います。Finish Me OffやPut Your World in My World、Got to Get Away from It Allなど良い曲ばかりなのに、少し残念ですね。


016

Trapped by a thing called love / on the loose

DENISE LA SALLE デニス・ラサール

Denise La Salleは1939年、ミシシッピー生まれ、アレン家の八番目、末っ子です。田舎で育ち、バプティスト教会で唄っていました。当時の南部は差別が厳しく、コットンを摘みながら、抜け出す事を夢見ていました。

 

十代の時に小説を書き、True ConfessionsとTan Magazineに載りました。歌だけでなく文才もありました。天は二物を「与えた」タイプですね。

 

1950年代にシカゴへ移り、5人すべて女性のZion Temple Choirに加わります。曲を書き始め、バーメイド(女給、女性バーテンダ)として働いていると、Billy "The Kid" Emersonと出会い、彼はマネージャーになります。ステージネームをDenise La Salleと改名し、プロの歌手として活動を開始し、 1967年にEmersonのTarponというレーベルでレコードデビューします。

 

このCDは、ファーストアルバムのTrapped By A Thing Called LoveとセカンドのOn The Looseが1枚にカップリングされた22曲入りのお得版です。Deniseは曲も書き、全米ナンバーワンになったTrapped By A Thing Called Loveも彼女の作品です。カバーも多く、Barbara LynnのYou'll Lose A Good ThingやCarole KingのIt's Too Late、Bill WithersのLean On Me等をやっています。Caroleの歌はこの頃の女性ソウル歌手には人気が高かったようで、Aretha Franklinのカバー(You Make Me Feel Like) A Natural Womanは特に有名です。

 

Deniseの声は、本当に良い声で、多少いけてない曲でもこの声で唄えばヒットするのでは、と思わせるほど魅力に溢れています。どんな声かを言葉で説明するのは難しいのですが、ライナーノーツはMasterfully Soulful Voiceと称しています。パワフルなだけでなく繊細なWhat Am I Doing WrongやI'm Over Youなどは本当に(日本人でも)ソウルを動かされます。