新旧対比で、キュレーターの仕事の移り変わりを紹介します
必ずある程度の割合で居る、「昔は良かった」と言う人たち
仕事や暮らし、芸術、人間関係などあらゆることに対して、「昔は良かった」と言う人たちがある程度の割合で必ずいます。
昔のことなので、良かった事しか覚えておらず、勝手に理想化している場合もあるでしょう。でも、本当のところは分かりません。
キュレーターの仕事はどうなのでしょうか?今回はキュレーターの仕事に対して、昔と今の違いを紹介します。
キュレーターは、「今」と「次」を巧く操る力量が必要
キュレーターをとりまく環境は大きく変わりました。昔の仕事ぶりに関してこう書かれています。
ひとつの展覧会コンセプトのために、何年もかけてリサーチと企画の肉づけに従事するものであった。キュレーターは、コレクションの主要な作品、アーティストの歴史、美術の一派や潮流を考察しながら、重要な作品の詳細を分析することによって新しい発見を得て、それを展覧会としてまとめ上げるということをしていた。
これを読むと、大体今の仕事ぶりが想像できると思います。スピードアップやマーケット重視、マルチタスクといった単語が頭に浮かんでくるはずです。
美術館の商業的側面ー多くの利益を生み出すブロックバスター型の展覧会[著名作品の国際的な規模での貸し借りを前提とした、世界中から観衆を集める大型展]を開くのか、それとも収益は見込めないが特定の関心事を取り上げた展覧会を開くのかといった問題ーを度外視するわけにもいかない。近年の展覧会は、研究の関心と市場の関心の組み合わせで考えられるものがますます増えている。
「研究価値」の高いものを展示すれば認められるはず、というのが昔の考え方です。昔の製造業の、良い製品を作ったら売れる、という考えと似ていますね。
さらに、じっくり取り組むということが出来ない環境になっています。
つねにひとつの展覧会を管理しながら、それを観客に届け、同時に次の展覧会の構想、調査、素案の準備を進めなくてはいけない。それに加え、いずれ展覧会の解説文、あるいは書籍や展覧会カタログの一部となるかもしれない文章の執筆や編集に従事する場合もある。
キュレーターには、現在のものを管理・遂行しながら次の企画を立ち上げるという、「今」と「次」を巧く操る力量が求められる。
引用は全てエイドリアン・ジョージ『The Curator's Handbook』
ここの部分は、とても興味深かったです。昔の仕事が展覧会を開くという1つのプロジェクトのWBSで閉じていたのに対し、今の仕事は、ベネフィットの関連性を勘案したうえで、複数のプロジェクトを管理する必要があるということです。
実は昔の仕事も今と変わらなかったはずです。展覧会と展覧会の期間が長かったため、タスクの相互影響が薄く、「今の仕事」の構造をあまり意識せずに仕事を進めていたと思われます。
展覧会を開くというのも、展覧会ごとのテーマの何かその上位のテーマのための方法の1つというように、明確に意識するようになったという事だと思います。そのテーマが、一般大衆にアートを理解してもらう「教育者」的なものなのか、「歴史の文脈の中に新しいアートを位置づける」なのか、キュレーターによって様々なのかもしれません。
「今」と「次」を勘案して、今のタスクに集中できることがキー
今日は、キュレーターの仕事ぶりを新旧対比で紹介しました。
じっくり企画に取り込めた昔が良かったのかどうか良く分かりません。しかし昔はシングルタスクで、今はマルチタスクでこなさないといけない、と単純に捉えてはいけないと思います。
「今」と「次」を考慮の上でタスクをオーガナイズして、今のタスクに集中できること、これがキーだと思います。
キュレーターの企画力に興味があるなら、これもおススメ!
関連記事:アイデアを得るには?キュレータが実践している事 - キュレーターに学ぶ企画力(4)
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