ロック・ミュージック

010

ロック・ミュージック 5

Warren Zevon ウォーレン・ジヴォン

華やかな都会の夜に、一人寂しく街を彷徨うろつく。話しかける相手のあても無いのに、何となく人恋しくて、家にはいられない。

 

このWarren Zevonのアルバムを聴くと、そんな寂しい夜を思い出します。リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)がアルバムタイトルにしたHasten Down The Windを代表に、他にもMohammed's RadioやPoor Poor Pitiful Me、Carmelitaなど、このアルバムの曲を4曲もカバーしたことでも分かるように、まさに名曲が詰まっています。それらのどの曲もが醸し出すハードボイルドな雰囲気がそんな記憶を蘇らせます。

 

ところが、今はスマホが一変させました。街を彷徨く代わりに、SNSの虚構の友達ネットワークの中を家に居ながらブラウジング、になってしまいました。視覚からの刺激だけが拡大されてしまい、肌で感じる何かが欠けてしまったように思います。

 

しばらく歩き回った後に立ち止まって人の流れを見つめていたら、心の底に何か温かい安心感のようなものが生まれてきました。それはこのアルバムのちょっとしたフレーズを聴いた時など、ふとした瞬間に同じ感じが込み上げてきた時がありました。

 

たまにはスマホを家に置いて、街に出てみましょう。あの寂しい中にほんのり温かい気持ちが堪らなく懐かしく思います。


009

Metal Box

public image limited  パブリック・イメージ・リミテッド

中学の時にこのアルバムを聴いて、物凄い低音に驚いた事は、忘れられません。今は、iPadとちっちゃなBluetoothスピーカーという組み合わせで聴いていて、明らかに低音の物足りなさを感じつつも、本当はどうだったのか?というクエスチョンマークが頭の中を埋め尽くします。

 

40年近くも前の事です。人間の記憶なんて全くあてになりません。実家のレコードプレーヤーはとうの昔に壊れてしまっていて、如何せん、確認のしようもありません。

 

1曲目のAlbatrossから太いベースに、金属的なギター音、Sex Pistolsとは全然違うJohn Lydonの冷たい声、すべてが冷ややかです。熱くなりません。黒人音楽をコピーしながらも、黒人音楽とはリズム感覚が全然違います。どの曲も決してリズミックにはならず、重たく引きずるようなリズムです。クラシック音楽の「白鳥の湖」アレンジしたSwan Lake、スペーシーなキーボードのサウンドが特徴のCareering、その他、 Poptones、Bad Babyなどが特に良い出来です。

 

"mob, war, kill, hate"を繰り返すバックの声が、ごくろうさん的な曲のChantが終わると、最後の曲は、教会のパイプオルガンっぽいインストルメント、Radio 4です。疲れた耳をちょっとだけ癒してくれます。


008

The Asylum Years

JUDEE SILL ジュディ・シル

今年も新年を迎えました。地球の歴史から見れば、1月になったからと言って何かが新しくなるわけでもありませんが、年の初めは何となく新鮮な気持ちになります。おごそかというか、神々こうごうしく感じます。

 

Judee Sillを聴くと、いつもそういった類のSpiritualを感じます。同じ頃に活躍していた他のアーティスト、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)やCarole King(キャロル・キング)、Carly Simon(カーリー・サイモン)、Laura Nyro(ローラ・ニーロ)には無いものです。年の初めのように、何がどう違うかは分かりません。でも確かに感じます。

 

アサイラムでたった2枚のアルバムを発表しただけで亡くなってしまったこの不遇な女性アーティストは、先ほど挙げた女性アーティストほど世間では知られていません。2枚のアルバムも高い評価を得ましたが、チャート的には振るいませんでした。

 

その2枚のアルバムをカップリングしたこの2枚組CDを聴くたびに、不幸な薬物中毒など悲惨な人生だった彼女の、音楽にかけるひたむきな思いに胸を打たれます。Lady-OやJesus Was A Cross Maker、My Man On Love、The Kissなどシンプルな音の構成の歌たち、新年のピーンと張り詰めた空気のようにSpiritualを感じさせます。これは、Down Where The Valleys Are Lowといったゴスペルベースの曲があるからSpiritualだと思うんだろう、といった形式の話では全くありません。

 

たった2枚のアルバムの中に、こんな素敵な曲をいっぱい残してくれた彼女には本当に感謝です。死んでから何十年も経って、自分の音楽がこんな遠くの島国で愛されていると知ったら、彼女はどう思うかな。


007

Remain in Light

TALKING HEADS トーキング・ヘッズ

【アンビエント+ファンク】Enoのアンビエント音楽がとってもファンキーに。不思議な音色の楽器が更に魅力をプラス

 

随分昔ですが、発売当初はロッキングオンでかなり論争が起こったアルバムです。黒人のリズム隊を入れてファンキーになるのはお手軽過ぎる、というのが非難の始まりでした。懐かしい!

 

このアルバム、僕は「単純に」好きでした。実は、発売当時の「リズムの洪水」と言う宣伝文句の程にはファンキーなリズムは強調されていないように思います。最初に1曲目のBorn Under Punchesを聴いたときは、宣伝文句から勝手に想像していた感じと異なっていた為に若干違和感を覚えました。聴いていると、通常のブラックミュージック(ファンク)のグルーブとはかなり異なっていて、ブラックミュージックの一方的な利用では無く、人と人とが一緒に演奏することから生まれるグルーブを感じるようになりました。

 

今ではわざわざバンドに入れなくてもサンプリングというもっとお手軽な方法が有ります。それこそ単なる素材として扱っていて、このアルバムのようなグルーブは出せないと思います。その辺りはDavid ByrneとEnoがブラックミュージックを一旦自分達で解釈してから演奏した結果のように思えます。独特のクールな感じはきっとスタジオアルバムだからでしょうね、You Tubeでライブを見ると、とにかくノリが凄くてカッコいいです。

 

The Great CurveのAdrian BelewのギターやHouses In MotionのJon Hassellのトランペット等色々と不思議な音色の楽器が聴けるのもこのアルバムの魅力です。


006

Blue River

Eric Andersen エリック・アンダーソン

このアルバムを聴いていると、凍えるような冬の夜に、星がきれいな空を観ながら暗い部屋に居るイメージが湧いてきます。落ち着いた雰囲気で、決して熱くはならないEric Andersonのヴォーカルは、クールながらロウソクの光のように、少しだけ心の中を温かくしてくれます。

 

このアルバムはフォークの弾き語りではなく、あくまで控えめなバンドサウンドです。特に、2曲目Pearl's Goodtime Bluesは意外にロック調なので驚きました。数えきれないくらい聴いているのに、始めて気がつきました。次のWind And Sandは、少しだけ他の楽器の音が絡むピアノの弾き語りという静かなサウンドで。大好きな曲です。Tom Waitsにも通じるリリカルでメランコリックな曲調が泣かせます。

 

5曲目のタイトル曲も、非常に好きな曲です。印象的なバックの女性ヴォーカルはJoni Mitchellだそうです。

 


005

Tin Drum

JAPAN ジャパン

【独創的なヴォーカルとベース】Jacoとはまた違う個性を感じさせる、フレットレス・ベースが魅力

 

バンド名の割に、このアルバム以前のJapanは特に日本的な所は無かったのに、このアルバムは思いっきり「日本的な」アルバムです。それも、欧米の人が抱く日本のイメージ、中国とイメージが混ざったエセ・オリエンタルムードそのものです。東洋的なメロディ、能楽っぽいSEなどあえて狙ったのでしょうか?外国人観光客がたまに着ている、意味不明の漢字が書いてあるTシャツを思い起こします。

 

80年代の有る時期、雨後の竹の子のようにシンセがピコピコ鳴るサウンドのバンドが現れました。Japanが他のテクノポップと違う所は、David Sylvianの個性的なボーカルもさることながら、サウンド的にはMick Karnのクネクネとしたフレットレス・ベースです。フレットレス・ベースは、Jaco Pastorius やPercy Jones(Brian EnoのAnother Green Worldの1曲目でベースを弾いている人)が有名ですが、Mick Karnも負けないくらいオリジナリティがあります。

 

しかし、Ghostは全くのベース・ドラムレスのスローな曲で、Davidのボーカルを存分に聴かせる曲です。このあたりがJapanの懐の深さです。


004

Electric Warrior

T.REX  T.レックス

【シンプルなワンパターン】シンプルだから、飽きの来ないオシャレ感覚

 

T.REXは凄まじくライブが下手だったそうです。某音楽評論家が来日コンサートに行き、どの演奏曲も同じに聞こえて全く区別がつかなかった、というから相当です。YouTubeにLiveが数曲アップされています。確かめてみると、確かに。。

 

Electric Warrior、邦題が『電気の武者』というカッコいいタイトルのこのアルバムは、ジャケットもいい!今YouTubeで見るとさほどハンサムでもないMarc Bolan率いるT.REXが下手な演奏でも人気バンドになった理由は、このセンスの良さのお陰でしょう。グラムロックという派手な印象とは正反対に、曲はシンプルだがとてもオシャレな感じがします。大貫妙子も昔ラジオでそんな事を言ってました。

 

T.REXの曲は、歌詞は違えどもどれも同じです。アップテンポのブギーとスローな曲、2パターンしかありません。このアルバムではアップテンポとスローな曲が交互に出てきます。1曲目のMambo Sunは軽快なブギーのリズムに乗った、T.REXのアップテンポの曲の良さが溢れた曲です。2曲目はスローなCosmic Dancer、なかなか良い曲です。以降、このパターンの繰り返しでアルバムは終わります。

 

6曲目(昔でいえばB面の最初の曲)のBang A Gong (Get It On)は大ヒット曲だけあって、ワンパターンの曲の中でも頭1つ分抜けています。Power Stationのカバーでも有名です。シンプルな構成なので、かえって飽きの来ない永遠にカッコよく新鮮な曲です。続くPlanet Queenはスローな曲ではこのアルバムのベストで、この2曲がアルバムの山場ですね。

 

同じグラムロックでもDavid BowieやRoxy Music(Bryan Ferry)と違って、T-Rex(Marc Bolan)の人気は長続きせず、あっという間に落ち目になり交通事故で死んでしまいました。ロックスターを絵に描いた様な分かりやすい人でした。


003

Skylarking

XTC

【一瞬の輝き】Beatles好きの変人+奇人が作った最高のポップミュージック

 

最近、初のライブCDが発売されまだまだ話題が多いのがBeatlesです。そのBeatlesが大好きで、ポップだけどくせのある一筋縄ではいかない音楽を XTCのリーダーのAndy PartridgeとプロデューサのTodd Rundgrenは作っています。

 

そんな似たもの同士が組んだらどうなるか? 誰もが注目したが結果は、この素晴らしいアルバムを残して喧嘩分かれ、でした。 もう二度と実現しない二人のポップミュージックの天才が 才能をぶつけ合ったできた貴重なアルバムです。

 

1曲目から3分間のキャッチーなメロの曲の連続波状攻撃で、聴いていると『ポップミュージックっていいなあ』と単純に幸せな気分になります。スタジオの雰囲気は険悪だったのかもしれないのに、そんな気配は微塵も感じられません。

 

ピークは4曲目That's Really Super, Supergirlから6曲目の1000 Umbrellasに繋がる所、Strawberry Fields Foreverの頃の ボップでサイケなBeatlesが再現されています。 思えば、Beatlesも二人のポップミュージックの天才が才能をぶつけ合ったバンドでした。

 

けれど、僕のお気に入りはこの二人の作品ではなく、ベースのColin Mouldingが作ったDyingです。この人はAndyの影に隠れてしまい余り目立ちません。けど、結構良い曲を作る人です。この曲も、アルバムの中ではかなり地味だが繰り返し聴いてしまいます。Beatlesで言えば、George Harrisonみたいな人なのかもしれません。


002

After The Gold Rush

NEIL YOUNG  ニール・ヤング

【寂寥感ロック】どこか寂しさ感溢れるアコースティックな曲と、延々続く独特のエレキギター

 

『ゴールドラッシュの後』という印象的なタイトルは まさにこのアルバムを一言で言い表しています。 日本語だと祭の後の寂しさ、に近い感じだと思います。 このアルバムではNeil Youngの独特の寂しさ感がどの曲にも溢れています。 同じ西海岸でもEaglesのTake It Easyの世界とは随分違います。Neilがカナダ出身だからでしょうか。

 

1曲目、アコースティックなTell Me Whyで始まります。 シンプルな曲だがメロディの良さが光ります。 続いてピアノだけをバックにしたタイトル曲のAfter The Gold Rushは、シンプルな構成が余計にNeilのボーカルの寂しさ感をより浮かび上がらせます。くせの有るNeilの声は万人向けというわけにはいきませんが、僕の様に好きな人には最高の曲です。

 

4曲目のSouthern Manは、アップテンポの有名な曲です。人種差別が未だに続く南部を非難する曲だそうです。 途中Neilのギターソロが延々続きます。Eric ClaptonやJeff Beckといった人達の華麗な流れるようなプレイと比較すると、誰にでも余り流暢でないのが分かります。それでも、これだけ長いソロを全然飽きずに聴かせるのには感心してしまいます。

 

Neilの場合、テクニックよりセンスを大事にしているという事なのでしょうね。確かに、彼の曲には華麗なギタープレイは似合いません。


001

Close to the Edge

yes イエス

日本では「起承転結」が一番有名なのに対して、西洋では三幕構成など3が割と好まれます。けれども、交響曲は3から4に構成が移っていきました。モーツァルトなどはその過渡期で、初期の曲は3部構成で、晩年は4部構成です。調べた事が無いのでその理由は不明です。

 

昔King CrimsonやPink Floydと共にプログレ御三家と呼ばれていたYesのClose To The Edgeは、プログレの古典的名アルバムです。タイトル曲は、昔で言うA面1曲の大曲で、交響曲のような4部構成となっています。

 

それぞれサブタイトルがついていて、アップテンポの1部はThe Solid Time Of Change、2部はTotal Mass Retainです。Yesのメンバーはみんな凄いテクニシャンで、それぞれの楽器の音が自由に絡み合います。3部は一転してスローな I Get Up I Get Down、教会のオルガンのようなシンセの荘厳な音が響き渡ります。最後がSeasons Of Man。見事な結末となります。まったくもって「起承転結」の見本のような作品です。

 

ボーイソプラノっぽいJon Andersonの高い声は、暑い夏に聴くと風鈴のように、なんとなく涼しい気持ちになります。